研修プログラム

講義2「地域活性化と社会マーケティング」

河西氏
札幌学院大学 経営学部経営学科 教授 河西邦人氏

 

私は大学教授をしておりますが、6年程前から北海道NPOバンクの理事もさせていただいております。この中にもすでに融資させていただいている団体の方もいるかと思いますが、今後も必要なときがありましたらご相談いただければと思います。NPOの皆様のご発展のために基金より融資させていただきますので、よろしくお願いします。
本日は、田澤さんがインターネットを中心とした情報発信というお話をされていて、次のワークショップがマーケティングということですので、私からは「社会マーケティング」についてお話をさせていただきます。
「社会マーケティング」とは、アメリカでは非営利団体や行政などで地域社会を変えていくために効率よくやっていく考え方として採用されることが多く、ソーシャルマーケティングと言われています。

※資料画像をクリックすると拡大します。

◆地域活性化

Image1私は地域活性化の研究をしておりますので、まず地域活性化についてお話します。資料にあるように、「認知」「意識変化」「移行」「定着」という流れがあります。
最初に問題に気づいた人が社会の流れを創るのが「認知」。社会全体に問題意識が波及していって意識が変わっていくのが「意識変化」。それだけではだめで実際に問題を解決するという実行が重要で、その実行するために行動をおこしていくのが「移行」。一つの問題が解決された後、その後も継続的に解決していくために制度化を図るのが「定着」となります。地域活性化には、この4段階の過程が必要だと考えられます。社会マーケティングは地域社会を変えるマーケティングとも言われていて、地域活性化には重要な手段になっています。

◆個人の気づきから社会制度化へ

Image2「マーケティング」という言葉は皆さんはすでにご存知だということでお話をさせていただきます。
まず個人が気づきを持って、同じ気づきを持った人が組織を作ります。そこでさまざまな活動を始めてビジネスになっていくものをソーシャルビジネスと呼びます。ビジネスになっていく時にはマーケティングが必要になります。

◆社会(ソーシャル)マーケティング

Image3資料には「1ビジネスマーケティングの定義」がありますが、皆さんの活動では顧客や利益という考え方はあまりしないと思います。むしろ、「2社会マーケティングの定義」に合っていると思います。どういう人のために提供をしていくのかということで「3社会マーケティングのタイプ」をまとめています。

 

◆社会マーケティングのサイクル

Image4社会マーケティングを考えるにはサイクルがあります。「PDSサイクル」というのをご存知でしょうか?「計画立案(PLAN)」「実行(DO)」「検証(SEE)」とありますが、この英語の頭文字をとったものです。これは経営では一番基本となる考え方です。これを社会マーケティングにあてはめたのが資料の図です。皆さんの団体の使命を効率よく達成するためのサイクルと考えていただければと思います。そして、この過程を何度も繰り返していくことが重要です。

◆社会マーケティングの基本コンセプト

Image5マーケティングの項目を社会マーケティングに置き換えたものです。この項目は深く見ていくと難しいものになりますので、簡単に説明をしていきます。みなさんがする活動のように、課題解決を働きかけることを社会戦略と言います。実行するためのより効率的な仕組みや制度を作ることを社会マーケティングミックスと言います。さらにポイントとしては、事業者の立場だけでなく、課題をかかえている人たちの視点に立ったマーケティングも必要で、両方の面から考えるのが重要になります。団体の立場から物事を見てしまうことが多くなり、課題をかかえている人たちの心情や現状を軽視してしまうこともあるかもしれません。そうなると、結果として社会に受け入れられなくなることもあります。
次にそれぞれの中身を説明します。

◆社会戦略

Image6「1利害関係者の整理」は、様々な利害関係者の中から2つに焦点をあててみるのが第1段階です。「2社会細分化(セグメンテーション)」は、活動している社会で直接的に関わりそうな人たちの集団を選び出すことです。「3ターゲットにする課題を抱える集団の細分化」では、細かくグループわけして、対象とする集団を明確化するということです。対象を明確化して働きかけると効率がよいと考えます。
では、環境をテーマにした具体例を紹介しながら、社会戦略の内容について考えてみましょう。
「ロハス」という言葉を聞いたことがある方はいらっしゃいますか。自分自身の健康や地球環境に関して持続可能性を注視する消費者層を「ロハス」と言います。ロハスを説明したニュースを見ていただきましょう。
(資料映像を視聴)
社会の中で消費者がどのようなグループにわかれているのか。健康や地球環境に関心のある人たちを「ロハス」という名前をつけて読んでいます。みなさんの活動でも、どういう人を対象にするのかを考えて、そこからマーケティングを考えていかなければいけないということになります。
「価値観」でターゲットを決めるという話をしていました。それは、皆さんの活動でも同じではないかと思います。通常、マーケティングで細分化するときに、年齢、性別、収入などで集団を決めていきますが、皆さんの活動では、例えば障がい者をターゲットにするというと明確かもしれませんが、例にあったように「環境」などをテーマにすると価値観が重要になってきます。
従って、皆さんの価値観に共鳴してくれるような人たちが大事になります。そうではない人たちに働きかけても賛同したり、参加したり、利用者になるということはないと思います。皆さんが社会マーケティングを始めるときに、価値観に共鳴してくれる人がどこにいるのかを探すことが第一歩になると思います。
映像では、ビジネス寄りのマーケティングでロハスを扱っていますが、皆さんの活動では、顧客ではなく課題をかかえている人や利用者に置き換えたり、ビジネスではなく社会貢献に置き換えてみると、重要な視点を含んでいたと思います。
ポイントをまとめてみますと、1つ目のポイントは、皆さんと同じような価値観を持った人というのも難しいかもしれませんが、まず、活動の価値観に共鳴してくれるような人たちを対象として働きかけること。先ほどの田澤さんの講義で「HPに活動や理念を書いておくこと」とありました。それは、皆さんがどんな人をターゲットにしているのかを示すことになります。そこで共鳴してくれる人を選別することができます。
2つ目のポイントは、皆さんは素晴らしいことをしているのに、活動がなかなか理解されないこともあるかと思います。地道な活動が理解されて認知されることも重要ですが、先ほどのロハスの話で若い女性の言葉に「世界的に有名な俳優であるレオナルド・デカプリオがハイブリットカーに乗っているのを見て環境に配慮していると思った」とありました。こうしたことが、若い女性の中でロハスという認知が広がるきっかけにもなっています。皆さんの活動でも、デカプリオとは言いませんが、活動内容をわかりやすく体現してくれる人や物語があるとわかりやすいと思います。
例えば下川町の例が最近あります。下川町に坂本龍一が来て、森林保全に協力してお金を出してくれるということが昨年ありました。坂本龍一が協力するというのはわかりやすい物語です。特に中年層には、坂本龍一は音楽家としてとても有名なので、そういう人が関心を持っているということで下川町に関心が向けられます。皆さんの活動でも、対象としている人の関心をひくようなシンボルを探していく、活動の中から見つけていくことが重要だと思います。
3番目のポイントは、百貨店で商品を作るシーンがありました。皆さんが対象とする利害関係者が明確になると、その人たちが何を望んでいるのかよりはっきりしてきます。田澤さんの話で、「質問サイト」からニーズが見えてくるという話をしていましたが、それは、質問サイトを利用している人が明確になれば、その人が必要としているニーズがわかるということです。対象を決めて、ニーズを把握して、活動を決めていくという考え方が重要だということになります。

◆ニーズの顕在化

Image7課題が明確な人にアピールしたほうが効率が良い。ただし、社会貢献活動の利用者の方は、課題があるから皆さんのサービスを受けている。これは、当たり前のことのようですが、皆さんの活動を支援をしてくれる人の中には、課題を認識している人とそうでない人がいるので、まずは社会課題を認識している人に働きかけをする必要があります。社会課題を認識している人たちを社会の中でグループ化して細分化し、その人たちに働きかけることが重要です。

◆理由づけマーケティング

Image8人間が行動を起こすときに、心理的な側面で理由づけがあります。ロハスであれば、「私の行動が地球のためになる、だからその物を買うのがいいこと」ということになります。皆さんの活動に関わってもらうにも、明確な理由づけが必要です。HPなどで情報発信するときには、どういうメリットがあるのかを明確にする必要があります。
例えば、私のところには、国境なき医師団からDMがきます。「寄付をすることで、子どもたちが救われる。1000円でこれだけの子どもたちが救われる。10000円ならばその10倍の子どもたちが救われる」という情報を見ると、それが理由づけとなって寄付をするという行為につながります。
皆さんの活動についても、寄付、活動に参加する、利用者になるというのが結果として社会全体にどのような影響があるのかを理由づけとして提供することが重要です。また、時代の流れも重要で、今の時代だからという理由づけもあります。
行動を起こすときに障害になることを取り除くということでは、例えば「あなたが飲むコーヒー1杯が役に立つ」というケースもあります。コーヒー1杯でできるなら寄付よりも気軽に参加できるということで、金銭的な障害を取り除くことにつながります。
さらに、どれだけ役立ったのかを情報として、DMなどで知らせてくれると、自分が寄付をした行為で効果がわかるので、次もまたという気持ちになります。
皆さんに支援してくれたり、利用してくれる相手に対して満足感をあたえる理由づけも重要です。これはNPOではできていないところが多いかもしれません。活動結果は教えてくれても、それによってどんな課題が解決できたのかが情報として提供されていないのではないかと思います。

◆価値の内容

Image9中核的な価値と周辺的な価値があって、皆さんは中核的な価値には力を入れていますが、周辺的な価値に気を配ってほしいと思います。
例えば、障がい者に雇用の場を提供している団体さんもいますが、その場合の周辺価値として何があるのか?障がい者の人が作るものに芸術性があるとすれば、それが周辺価値だと認識して、高く売ることによってうまく活動しているNPOが東京にあります。知的障がい者の芸術的な価値の高い作品を企業に売る活動をしています。NPOにとって、働く場を提供することが大事な中核価値だと思いますが、働いてできた作品は周辺価値ですが、こちらのほうに経済的価値があり、この認識がうまく成功した事例だと思います。
ロハスの例は中核価値は健康や環境保全で、周辺価値はロハスに関心を持っていることで意識が高い人と見てもらえるということ。周辺価値に重きをおいています。働きかけとしては、社会課題を解決できる一方で、周囲から意識が高い人だと思ってもらえるという点が攻略するポイントでした。
また、マザーハウスという会社があり、バングラデシュの女性たちを雇用して、ファッション性の高いバッグを売っています。副社長の言葉に「自分たちがやっている活動は、バングラデシュで作る以外はただバッグを生産して売っていることに変わりはない。ただ、マザーハウスというブランドのバッグの場合は、購入することが結果として貧しい少女たちを救うことになる。そういう社会貢献をしたい人たちが当社のバッグを持っていて、そこにブランド価値がある」という話がありました。バッグだけに焦点をあてて日本の消費者に買ってくれといっても、他のブランドに負けてしまいます。でも周辺価値として物語があると、購入する人に周辺価値を持ってもらうことができます。皆さんの活動も、周辺価値に目をむけて社会から理解してもらう努力が必要だと思います。
パッケージについてですが、札幌で「ふくろう」という活動をしている人たちがいます。地域社会で助け合う活動ですが、700円の「ふくろう利用券」があります。これは金額的にも、利用条件も使いやすいパッケージになっています。介護事業などは難しいかもしれませんが、自由度の高いサービスであればパッケージを考えるのも可能かと思います。寄付をしやすい金額を設定するなど、支援する人にもしやすい中身にすることも重要です。

◆社会課題のライフサイクル

Image10社会課題のライフサイクルについては、社会課題について人間の寿命と同じように時期にわけて考えてみるということです。皆さんの活動の社会課題がどこに当たっているかによってマーケティングが変わってくるということです。例えば、社会課題が認識されていない場合は啓蒙活動が重要で、課題について個別の解決を提供するのが重要。それが、ある程度共有されていった場合は制度的な解決策が必要になるので、政策提言が必要になります。活動の課題がどの段階にあるのかによって、マーケティングがかわってくることになります。

◆価値・成果と負担

Image11簡単に言いますと、社会貢献活動のお金をどこから持ってくるのか、料金をどう決めていくのかということです。

 

 

 

◆社会性関連づけマーケティング

Image12札幌通運「はこび愛ネット」のように、企業が社会貢献をNPOを通じて行うという例が出てきています。そうした事例を見てみましょう。
(資料映像を視聴)
先日、東京で開催されたソーシャルビジネスメッセに参加してきました。企業の社会貢献の意識が高まってきています。企業の方から「多くのNPOの人たちは自分たちのミッションや理念、活動を述べますが、企業にどのようなメリットがあるのかが欠けている」というお話も聞きました。ということは、企業にメリットを含めた提案ができれば採用される可能性が高いと思います。そのためには、社会マーケティングという考え方に基づいて計画して行動するという意識を持たないと、企業に協力してもらうのは難しいかもしれません。東京では、自分たちの活動をきっちりしていくためにも、社会貢献意識の高い企業と一緒に活動しているNPOやNGOが増えてきています。

◆社会課題解決提供方法

Image13コンサルティングの事例としては、北海道ではグリーンファンドという活動などがそうです。企業が環境問題にどのようにアプローチしたらいいのかコンサルティングをしています。
多くのNPOの場合は、直接提供や啓蒙活動が中心かもしれませんが、卸売方式も考えてみるといいかもしれません。

 

◆ネット時代の行動モデル

Image14「インターネット時代の行動は以前と変わってきている。だからインターネットを活用するのが大事だ」という話が田澤さんからありました。資料ではインターネットが活用されている中での行動モデルを説明しています。

 

◆コミュニケーション

Image15インターネット時代であるということも踏まえた上で、今は従来型の情報提供から双方向型コミュニケーションに変わってきています。今まではイベントや紙媒体が中心だったかもしれませんが、これからは、インターネットを使っている利害関係者に合わせた情報発信の仕方が重要になってきます。メディアミックスが重要で、そのひとつにブログがあり、クチコミやトラックバックをうまく活用することも考えられます。クチコミでは、影響力のある人を招いてクチコミを連鎖させていくのもポイントになります。

◆コミュニケーションのポイント

Image16コミュニケーションで重要なポイントは、耳を傾ける、ニーズを聞き取るということになります。皆さんの活動でも、そうしたポイントを大切にしていただければと思います。